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「読ませない」文章の書き方を学べる「書く技術・伝える技術」

「読ませない」文章の書き方を学べる 改訂新版 書く技術・伝える技術 (スーパーラーニング) を読んだ。

「読ませない」文章とは、読み手が情報の取捨選択を容易に行える文章である。文章は読ませるものという固定観念が最初の章でまず打ち砕かれる。もちろん文章の目的は、読んでもらって何かを伝えることなのだが、ビジネス文書ではより効果的に情報伝達をすることが求められる。この本では、

  • 読み手にとって必要ない部分は要約だけ見て読み飛ばせる。
  • 読み手にとって必要な部分は要約を見た後に詳細を読み込める。

という性質を持ち、小さな負担で内容が理解できるビジネス文書の構成方法を解説している。

この本で解説されているのは、パラグラフを組み合わせて文書を構成していく「パラグラフライティング」の手法である。ひとつのパラグラフでは一つのトピックだけを述べること、パラグラフの先頭は要約文とすることといったパラグラフライティングのポイントが一つ一つ丁寧に解説されている。

ひとつのパラグラフでは一つのトピックだけを述べる。そうすると、読み飛ばした場合にちょうど一つのトピックに関する部分を読み飛ばせる。読み飛ばしたつもりのトピックがまだ続いていたり、意図せず違うトピックまで読み飛ばしてしまうことがないと保証できる。

パラグラフの先頭は要約文とする。必ず読まれる冒頭の文を要約文とすることで、読み手はパラグラフ全体を読むか読まないかを最小限の時間で判断できる。要約文の内容に納得したならそのパラグラフはスキップし、納得できない時だけ読み進めばよい。

パラグラフ先頭の要約文の存在は、読み手がメンタルモデルを作って読むことを可能にする。詳細に進む前に何が述べられるかの要約があることで、読み手は文章の展開を予想しつつ読み進めることができ、小さな負担で内容を理解できる。

メンタルモデルの尊重についてはそれ以外でも、文章の冒頭に総論を書くことや、文の構成の注意として既知から未知への流れを守ることの説明でも触れられている。すでに述べた情報を「つなぎ」とすることで、論理の飛躍を防止し、情報の流れをよくする。既に現れた情報を繰り返すと、重複によってくどくなってしまうことがあるが、それは気にしなくて良いと、理解のしやすさとのトレードオフの観点から明言されている。

良い文章が書けているかの検証方法も書かれている。126ページのColumn「正しく書けているかどうかを判断する方法」でパラグラフの先頭文のみで意味が通るかをチェックする手法が書かれているが、その説明自体が検証を華麗にパスする秀逸な文章であることに感嘆させられた。

具体的な書く手順も書かれている。そういう構成にしたら良いのはわかったけど、どうしたらそんな文章が書けるの?ワンパスじゃ無理だよね?という疑問に答えてくれる章が用意されている。189ページからの「ビジネス文章は、この手順で書き上げよう」の章で、段階的に文章を構成していく具体的な手順が説明されている。

理論と実践の両面から良いビジネス文章の構成方法を解説し、それ自体が小さな負担で理解できる本だった。つぎは学んだことを実践していく。