鯨飲馬食

いろいろつまみ食いで勉強したことのメモ書き

問題解決の前に、問題発見すること

細谷功(ほそやいさお)さんの「問題発見力を鍛える」を読んだ。

問題発見力を鍛える (講談社現代新書)

問題発見力を鍛える (講談社現代新書)

問題発見の第一歩は、「未知の未知」の領域を常に意識して「既知の未知」(新たな問題)に変えていく、「無知の知」の世界観。多くの人は「未知の未知」はハナから存在しないものとして、既知のことと「既知の未知」までしか意識しないのに対して、何か自分に見えていないものがあるんじゃないか、見ていないものは当然あるだろうと考えることで、未知の未知の領域から新たな問題を定義していく。

「見えないもの」を対象としていくということで、そういった指向の先には、リーダーシップの旅~見えないものを見る~ (光文社新書) に書かれているような、見えないものを見たリーダーが、それを周囲のフォロワーに伝えていく話にも繋がっていくと思った。実際、「問題発見力を鍛える」の第5章では、コミュニケーションギャップは物事を具体レベルで見るか抽象レベルで見るかの違いから来ると書かれている。まずはその違いがあること認識して、互いの見え方を知ろうとすることが、コミュニケーションギャップを埋め、一緒に歩む関係性の構築に繋がると思う。

問題が与えられた時には、それをいきなり解くのではなく、そもそもの理由を問い、背後にある新たな問題を見つけた上で解きにかかること。問題解決のための問いであるHowの前に、問題発見のための問いであるWhyを問うことで、より根本的な問題を定義するステップを踏む。これにより、アナロジーを利用して問題解決をしたり、あるいはより影響範囲の広い問題を解決し、大きなインパクトを出すことが可能になると感じた。

思考停止して常識を受け入れるのではなく、常識を疑いその理由や背景を考えることは、コンピュータでプログラムがうまく動かない時に、フレームワークの中で考えるのか、フレームワークも可変として考えるのか、という話と関連があると思った。自分が書いてるプログラムだけでなく利用しているOSSライブラリにも手を加えられるという視点を持つことは、ライブラリ、フレームワークをただ受け入れることからの脱却だし、ポール・グレアムBeating the Averages で書いた、Lispのマクロを使って言語を強化する話は、プログラミング言語をただ受け入れることからの脱却だと思う。自由度(抽象度)を一旦上げて考えることで、新たなフレームワークを再定義し、その上でより最適な問題解決が可能になる。

問題発見に関する本と言えば、 ライト、ついてますか―問題発見の人間学 を時々引っ張り出して見直すことで狭くなった視野を広げるのに使っていたが、今回出会った問題発見力を鍛える (講談社現代新書) も、すぐ引っ張り出せるように手の届くところに置いておこうと思う。